エンジニアの単価、なぜ隠される?「新SES」が支持される理由

最終更新:2025.06.03
公開:2025.06.02
エンジニアのみなさん、自分の単価をご存知ですか?
おそらく「分からない」と回答する方がほとんどかと思います。
単価とは本来、エンジニア個人の技術力や経験に応じて、企業とクライアントとの間で決められているにも関わらず、その金額はエンジニア本人に開示されないのが業界では一般的です。
しかし、「単価を知らされないことが当たり前」だった従来のSES企業、通称「旧SES」に疑問の声が上がり始めた結果、「新SES」と呼ばれる企業が増え続けています。
本記事では、旧SESに在籍経験のある著者が、「なぜSES企業はエンジニアに単価を開示しないのか」、その疑問に対するエンジニアたちの意識の変化、さらには、納得感ある働き方を選ぶためにエンジニアができることを掘り下げていきます。
この記事でわかること
- SES業界における「単価非開示」の構造的な問題を理解する
- 単価を「知ること」の重要性とメリットを知る
- 透明性を重視した働き方を選ぶための判断軸を持つ
この記事を書いた人

能宗 新
NOUSOU ARATA
株式会社Necmos フロントエンドエンジニア
大学卒業後、新卒でSES企業に入社するも、自身の将来性に危機感を抱いたことをきっかけに、株式会社Necmosに入社。デジタルクリエイティブ事業部の初期メンバーとして、開発未経験の状態から様々な受託案件に携わった後、再びSESとして金融系や官公庁系などの現場業務に従事。SESと受託開発の両方を経験することで"視野の広がり"を感じ、今後さらに対応領域を広げるべく、デジタルクリエイティブ事業に再復帰し、Necmos社内のDX化やコンテンツマーケティングなどを推進している。
なぜ旧SESは単価を開示しないのか?
旧SESにおける単価非公開は、企業の「戦略」でもあり、業界全体の慣習として長らく続いてきた「常識」とも言えます。
こういった構造から、旧SESのエンジニアの中には、自分の単価を知らないことを当たり前だと思い込み、知ろうとしない方は少なくないでしょう。
【企業側の戦略】価格交渉や利益維持のために「伏せる」
旧SESにとって、エンジニアの単価は「営業上の交渉材料」であり、「会社の利益」でもあります。
同じエンジニアでも案件や顧客ごとに単価をコントロールすることで、企業の利益を最大化したり、案件獲得の柔軟性を高めることができます。
単価を開示することで、還元率や利益の内訳が明らかになり、 「自社の利益の取り分がいくらか」というセンシティブな情報まで見えてしまうことにもつながります。
【開示リスク】開示すれば気づかれてしまう
旧SESが単価を開示することで、抱えるリスクは何かご存知ですか?
それは、エンジニア本人が「自分の取り分の少なさ」に気づくことです。
契約単価が月70万円で契約している案件でも、エンジニアの手取りは月25万円以下だったというケースは珍しくありません。
それに気づいたエンジニアが「割に合わない」と感じた時、企業に対する信頼は一気に揺らぎます。
- 「なんでこんなに差があるの?」
- 「こんなに取られてるなら、フリーランスの方が良いのでは?」
そういった疑問から、モチベーションの低下や退職のリスクが高まるため、企業としては開示に消極的にならざるを得ないのです。
結果、会社都合で単価は隠されることが前提となっている
「業界慣習」「営業戦略」「リスク回避」という三つの観点から、旧SESでは単価が隠されるのが当たり前という常識が長年維持されてきました。
どの理由も企業側の都合であり、エンジニアファーストとは言えません。
しかし今、この常識が少しずつ崩れ始めています。
「知らないままでいいの?」エンジニアの意識変化
単価は知らされないものという常識への違和感
かつては当たり前とされていた「単価非開示」という慣習も近年、疑問を抱くエンジニアが少しずつ増えています。
きっかけは、SNSや個人ブログでの情報共有です。
X(旧Twitter)やnoteでは、実際に現場で働くエンジニアが、「自分の契約単価と手取りの差額」を赤裸々に公開する投稿が増えてきました。
旧SESだと社員同士の繋がりが希薄であるため、そういった情報を知ることが困難でしたが、誰もが情報発信できる時代になったことで、これまでの慣習や常識を疑う動きが出てくるようになりました。
「給与が上がらない理由がやっと分かった」
そういった投稿を目にして、初めて自分の置かれている状況に気づく人も少なくありません。
「え、契約単価ってそんなに高いの?」
「私はいくら引かれてるの……?」
こうした気づきは、エンジニア自身の意識を大きく変えていきます。
「給与が上がらないのはスキルの問題だと思っていたけど、実は契約の構造そのものに問題があったのでは?」
という、構造的な課題です。
単価を知る=キャリアを自分で選ぶ
自分の価値が「いくらで売られているのか」を知ることは、単に会社の実情を暴くためではありません。
それは、自分のキャリアを主体的に選ぶための第一歩でもあるのです。
- 単価と報酬の差を正しく把握できれば、「転職すべきか否か」の判断がつきやすくなる
- 案件ごとの評価基準を知ることで、「自分がどこに価値を出しているのか」を理解できる
- 還元率の高い環境に移るという選択肢も視野に入る
このように、単価の透明性を求める声は、単なる不満の表明ではなく、より納得のいく働き方を自分で選ぶための行動へと変わってきています。
転職・フリーランス志向への広がり
単価に対する関心の高まりとともに、エンジニアのキャリア観そのものも変化しつつあります。
- 「会社任せではなく、自分で案件を選びたい」
- 「納得のいく評価と報酬がほしい」
- 「不透明な構造から抜け出したい」
こうした思考の延長線上にあるのが、転職やフリーランスという選択肢です。
実際に、「単価を知ったこと」が転職を決めたきっかけだったと語るエンジニアも少なくありません。
エンジニアが「透明な環境」を選ぶためのポイント
単価を知りたいなら、「見極める力」が必要になる
近年、旧SESのイメージを覆すような動きが増加し、新しい形のSES企業として「新SES」と呼ばれるようになりました。
しかし、単価非開示の旧SESに違和感を抱いたとしても、それだけで理想的な新SESにたどり着けるわけではなく、「どんな企業なら信頼できるか」を見極める視点を持つことが必要です。
これから紹介するポイントを押さえておけば、単価の透明性が高く、キャリアを真剣に支援してくれる新SESを選びやすくなります。
【新SES選びのポイント】
面談時にどこまで情報を開示してくれるか?
面談時に聞けることは、できるだけ全て聞いておきましょう。
面談での企業の対応は、その会社の透明性を映す鏡です。
- 「単価や契約内容について、どのタイミングで説明がありますか?」
- 「還元率はどう決まっていますか?」
- 「過去に公開している単価事例はありますか?」
こうした質問に対して、正面から答えてくれるかどうかが、判断基準になります。
評価制度やキャリア支援が“形だけ”になっていないか?
「キャリア支援をします」「成長できる環境です」といった抽象的な言葉ではなく、制度や支援内容が具体的に整っているかどうかを見極めましょう。
- キャリア面談の頻度や内容
- 学習支援や資格取得制度
- 成果と報酬の連動方法 など
現場で働いているエンジニアの声を確認する
できれば、すでにその企業で働いているエンジニアの声も参考にするとよいでしょう。
- SNS上の口コミ
- カジュアル面談で社員と話す機会
- ミートアップや勉強会などのオープンな場での会話
企業のWebサイトや求人票には書かれていないリアルが見えてきます。
【転職前に確認すべき項目】
単価の開示はあるか?
「自分の契約単価が開示されるかどうか」、これはシンプルでありながら、企業のスタンスが最も明確に表れるポイントです。
曖昧な表現でごまかされたり、後回しにされる場合は要注意です。
また、どこまで開示されるのかも確認しましょう。
ここを怠ってしまうと、単価開示が一部のみであったり、説明が不明瞭のまま話が進んでしまうことも...
給与制度や還元率が明示されているか?
単価だけでなく、そこからどのように報酬が決まっているのかという内訳の透明性も大切です。
「還元率はいくらなのか?」という問いに対して、明確に説明できる企業は信頼性が高いといえます。
企業によっては、高還元率をアピールしていたが、実際は手当や交通費を含めた見かけ上の数字だったパターンもあるので注意しましょう。
案件選択の自由度はあるか?
エンジニア本人が最終的に案件を選べるかどうかも、確認しておきたいポイントです。
「紹介だけして、選ぶのは本人」なのか、それとも「会社が配属先を決める」のか。
この違いは、単価の開示とは関係ないですが、働く上での納得感を大きく左右します。
【自分の市場価値の調べ方】
複数の企業からオファーをもらって比較する
自分がどれくらいの単価で評価されているのかを知るためには、比較対象を持つことが重要です。
最低でも2〜3社から見積もりやオファーを取り、相場感覚を掴むようにしましょう。
エージェントやスカウトサービスを活用する
現在では、単価情報を開示してくれるエージェントや、透明性をウリにするスカウト媒体も増えています。
「企業側からの見え方」を知る意味でも、一度相談してみるのは有効な手段です。
まとめ|「知らされない働き方」から、「選べる働き方」へ
旧SESでは長年にわたり、エンジニア本人に単価が開示されないという不透明な構造が当たり前とされてきました。
そこには、企業側の営業戦略や利益維持といった事情が常態化した業界構造がありました。
しかし、SNSやnoteでの情報共有、新SESの登場、そしてなにより、自分自身のキャリアを真剣に考えるエンジニアが増えてきたことその全てが、この構造を少しずつ変え始めているのです。
単価を知ることは、企業を攻撃するためではなく、自分を守るための手段です。
これからは、「言われた通りに働く」のではなく、自分の価値を知り、自分で選ぶ時代です。
転職するしないに関わらず、自身の単価について気になった方は、気軽にNecmosのカジュアル面談にご応募ください!
Necmos編集部
Necmos編集部は、現場で活躍するエンジニアの声やリアルな経験に基づいた信頼性の高い情報を発信し、読者が自身のキャリア形成に役立てられるようサポートしています。 また、エンジニア一人ひとりの価値観や想いを大切にしながら、業界最高水準の給与還元を透明性の高いマージン設計で実現することで、エンジニアが安心してキャリアに集中できる環境を整えています。