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SESの引き抜きは違法?給料は上がる?知っておくべきリスクと実態

SESの引き抜きは違法?給料は上がる?知っておくべきリスクと実態

最終更新:2026.04.03

公開:2026.04.03

SESの現場で「うちに来ない?」と誘われた経験はありませんか?

客先常駐として現場で奮闘しているなか、顧客企業から「今の会社を辞めて、うちで直接働かないか?」と声をかけられる――。これは、あなたのこれまでの仕事ぶりやスキルを「手放したくない」と高く評価された証であり、エンジニアとして非常に名誉なことです。

しかし、いざその誘いに乗ろうとすると、多くの不安が頭をよぎるのではないでしょうか。SES業界において現場からの引き抜きは珍しいことではありません。ただ、進め方を一歩間違えると法的なトラブルに発展したり、業界内での評判を落としたりするリスクもあります。

この記事では、そんな引き抜きの打診を受けて悩んでいる方に向けて、法的リスクの真実から、年収アップの実態、そして後悔しないための具体的な判断基準までを徹底的に解説します。

この記事でわかること

  • SESの引き抜きが「違法ではない」と言い切れる法的根拠
  • 訴訟リスクを回避するために知っておきたいNG行動
  • 「給料アップ」の誘いに隠された裏事情と見極め方
  • 移籍で待ち受けているかもしれない「3つの意外な末路」
  • 引き抜き打診を検討するときの重要なポイント
1)

SESの引き抜きは「違法」ではない!法的に守られる理由とNG行為

この記事の監修者

株式会社Necmos

Necmos編集部

Necmos編集部は、現場で活躍するエンジニアの声やリアルな経験に基づいた信頼性の高い情報を発信し、読者が自身のキャリア形成に役立てられるようサポートしています。 また、エンジニア一人ひとりの価値観や想いを大切にしながら、業界最高水準の給与還元を透明性の高いマージン設計で実現することで、エンジニアが安心してキャリアに集中できる環境を整えています。

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SESの引き抜きは「違法」ではない!法的に守られる理由とNG行為

結論から言うと、SESでの引き抜きに応じることは「違法」ではありません。会社間の契約(BtoB)で引き抜きが禁止されていたとしても、労働者個人(あなた)がどの会社で働くかを選ぶ権利は、法律によって最大限に守られているからです。

憲法第22条「職業選択の自由」は会社の契約より強い

そもそも日本国憲法第22条第1項は、「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と規定し、「職業選択の自由」を保障しています。

どんなに会社間で「引き抜き禁止」と合意していても、個人の転職を強制的に止めることはできません。

現場から「契約書に引き抜き禁止とあるから、うちを辞めて移籍するなら訴える」と突きつけられると、誰でも足がすくんでしまうものです。残念ながら、会社側が「契約違反だ」と主張して裁判を起こすこと自体を物理的に止めることはできません。言葉の定義としては「訴えられる可能性はゼロではない」というのが事実です。

しかし、ここで冷静に整理すべきは「訴えること(提訴)」と「その訴えが認められること(勝訴)」は全く別物だということです。

契約書の「引き抜き禁止条項」に法的拘束力がないケースが多い理由

SESの契約書(準委任契約など)には「引き抜き禁止」の文言が入っていることが一般的ですが、実はこの条項だけでエンジニアの転職を完全に縛ることはできません。

裁判になった際、裁判所は会社間の契約よりも「個職業選択の自由」を極めて重く見ます。エンジニアの転職を不当に縛るような契約条項は、「公序良俗に反する(社会的妥当性に反して不当である)」として多くの場合、無効と判断されるでしょう。
過去の判例を見ても、単なる引き抜きであれば、企業側の損害賠償請求が棄却されるケースがほとんどです。また「競業避止義務(ライバル会社への転職禁止)」についても、期間や地域が不当に広い場合は「無効」とみなされます。
多くの場合、会社側も「裁判で勝つのは難しい」と分かっています。それでも「訴える」という強い言葉を使うのは、法的手段をチラつかせてあなたを不安にさせ、転職を断念させるための「心理的な引き止め」であるのが実態です。

逆に「損害賠償」が現実味を帯びるNG行為

引き抜き自体は白ですが、「辞め方」が不法行為とみなされると、損害賠償のリスクが発生します。

  • NG行為1:機密情報の持ち出し現職の顧客リストや独自の技術資料、ソースコードを勝手に持ち出して引き抜き先に渡す行為は、不正競争防止法違反になります。
  • NG行為2:一斉引き抜き(集団的引き抜き)あなた一人の転職ではなく、チーム全員や複数のエンジニアを一度に誘って退職させる行為は、現職の事業を故意に妨害した(背信的行為)とみなされるリスクがあります。
  • NG行為3:在職中の引き抜き工作今の会社に籍がある状態で、現場の他のメンバーを勧誘するなどの行為は避けましょう。

あなたが誠実に退職プロセスを進めている限り、会社側の言葉に過度な法的強制力(あなたの転職を強制的に阻止する力)はありません。不当な威圧に屈して、自分のキャリアを諦める必要はないのです。

引き抜きで「収入」は本当に上がるのか?

現場から引き抜かれる最大のメリットは、給与の原資となる「単価」から引かれるマージン(中抜き)を減らせることです。商流が一段階上がるだけで、年収が100万円単位でアップするケースは珍しくありません。

商流が浅くなる(中抜きが減る)ことによる還元率の変化

会社が単価から差し引くマージンには、あなたの社会保険料の会社負担分(給与の約15%)、営業担当の人件費、オフィス賃料、採用費、そして会社の利益が含まれます。

一般的に、還元率が60%〜70%を超えていれば、SES企業としては非常に高水準と言えますが、商流が深くなるほど、各社がマージンを抜くため、エンジニアに還元される額は減ってしまうのです。

項目

現職(2次請け)

引き抜き先(1次請け)

クライアント支払単価

80万円

80万円

1次請けマージン

20万円

0円

(直契約のため)

自社の受取単価

60万円

80万円

会社経費・利益

30万円

30万円

(変化なし)

本人の月給(額面)

30万円

50万円

このように、クライアントが支払う予算(80万円)が変わらなくても、商流が一つ消えるだけで月20万円(年換算240万円)もの原資が生まれるのがSES業界の構造です。商流が浅くなる引き抜きであれば、基本的には大幅な昇給が期待できるのです。

正社員採用か?それとも「個人事業主」としての契約か

商流や提示された金額も大切ですが、「雇用形態」も確認しなくてはいけません。

現場から「月80万円払うよ」と言われても、それが「個人事業主(フリーランス)」としての契約(準委任)であれば、そこから国民年金、国民健康保険、税金をすべて自分で支払う必要があります。正社員なら会社が半分負担してくれる社会保険料が全額自己負担になり、退職金やボーナス、有給休暇もなくなります。

契約形態によって手元に残る金額やリスクが大きく変わるため「額面」だけで判断せず、福利厚生を含めた「総支給額」で今の会社と比較することが不可欠です。ここを曖昧にすると「額面は増えたのに生活が苦しい」という事態になりかねません。

そもそも現場はなぜあなたを引き抜くのか?

「君のスキルが素晴らしいから」という言葉は嘘ではないでしょう。しかし、企業が組織として動く以上、そこには必ず「コストと利益」の論理が存在するため理解しておく必要があります。

エージェント手数料やSESマージンをカットしたいだけの企業も多い

企業がエンジニアを引き抜く最大のメリットは、採用コストの大幅な削減です。

通常、SES企業を通じてエンジニアを1人活用し続けるには、毎月数十万円のマージンを払い続ける必要があります。また、中途採用で正社員を雇う場合も、転職エージェントに年収の30%〜35%(150万〜200万円程度)の手数料を払うのが相場です。

もし引き抜き先が「あなたの将来の成長」ではなく「目先のコストカット」だけを目的にしている場合、入社後の昇給額が渋かったり、教育体制が皆無だったりする可能性があります。

「マージンが浮く分、自分の給料にどう反映されるのか?」を回答できる企業かを見極めましょう。

今の現場が「終わった後」のキャリアパスは用意されている?

SESから現場の正社員になる際、最も怖いのが「プロジェクトが終了した時」です。

SESであれば、現場のプロジェクトが終了しても、所属会社が次の現場を探してくれます。しかし、引き抜き先で「その現場専用の要員」として採用された場合、プロジェクトが解散した瞬間に社内での居場所がなくなるリスクがあります。

その会社には、今のプロジェクト以外の自社事業や案件があるか?

5年後、10年後にどのような役割(マネージャー、アーキテクトなど)を期待されているか?

プロジェクト単位の「使い捨て」にならないよう、会社全体の事業ポートフォリオを確認することが重要です。

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後悔したくない!引き抜き後に待ち受ける「3つの意外な末路」

引き抜き転職は一見「勝ち組」に見えますが、入社した瞬間に立場や環境が激変します。良かれと思って選んだ道が、実はキャリアの首を絞めていた……という事態は避けなければなりません。

立場が「パートナー」から「社員」に変わり、責任と管理業務が激増

現場の正社員になるということは、これまでの「作業担当」から「責任主体」に変わることを意味します。パートナー(SES)時代は、言われた仕様通りにコードを書くことに集中できていたかもしれません。しかし、社員になると、予算管理、進捗報告、協力会社のエンジニア管理、社内調整会議などが一気に増えます。気づけば1日の大半がExcel資料作成や会議に消えていく可能性があるのです。

元のSES会社から業界内で「要注意人物」として噂が回るリスク

IT業界、特にSES界隈は、私たちが想像するよりもずっと狭い世界です。

不誠実な形での退職(バックレ、嘘の退職理由など)をすると、元のSES会社に強い遺恨を残します。SES会社の横の繋がりで「あのエンジニアは不義理な引き抜きに乗るタイプだ」と情報が回ることがあり、将来、もし引き抜き先の会社が倒産したり、転職したくなった際に、優良な案件や会社に巡り会いにくくなる可能性があります。

別の協力会社への移籍を勧められる「商流飛ばし」の罠!

これが最も注意すべきパターンです。現場から「うちに来て」と言われるのではなく、「うちと付き合いのある、別のB社に移籍してくれない?」と提案されることがあります。これはいわゆる「商流飛ばし」です。現場(A社)は、今のSES会社(現職)との契約を切り、都合の良いB社にあなたを移籍させることで、コストを下げようとします。あなたにとっては「所属するSES会社が変わっただけ」であり、正社員としての安定やキャリアアップが保証されないケースがほとんどです。

リスクを正しく評価し、後悔しないキャリア選択を

現場からの「引き抜き」の打診は、あなたのエンジニアとしての価値が証明された素晴らしいチャンスです。最後に、最も重要なポイントを振り返りましょう。

  • 引き抜き自体は「違法」ではない:憲法で保障された「職業選択の自由」は、会社間の契約よりも優先されます。不当な脅しに屈する必要はありません。
  • 「辞め方」には細心の注意を:機密情報の持ち出しや一斉引き抜きは、損害賠償リスクを招きます。「立つ鳥跡を濁さず」の精神で、誠実な退職プロセスを踏むことが必要です。
  • 「条件の裏側」を冷静に見極める:年収アップの額面だけに目を向けず、雇用形態や「現場が終わった後のキャリアパス」まで確認して初めて、その引き抜きは「成功」と言えます。

「引き抜き」は、あなたのキャリアにおけるゴールではありません。むしろ、さらなる高みを目指すための「通過点」に過ぎません。

誘ってくれた企業の熱意に感謝しつつも、自分と一人のプロフェッショナルとしての将来のキャリアを考えた決断を下してください。正しい知識を持って選んだ道であれば、それはあなたにとって価値のある経験になるはずです。

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この記事を書いた人

山根 早映子

山根 早映子

SAEKO YAMANE

株式会社Necmos キャリアアドバイザー

新卒で証券会社に入社し、リテール営業・経営企画を6年経験。デジタル・AI化が進む中で「人だからこそ提供できる価値」を追求したいと考えるようになり、Necmosの掲げる「自分らしさが誰かのためになる世界」に共感し転身。現在は、多角的に人と時代を捉え、その人にしかない強みや可能性を引き出すことで、エンジニアが自分らしく活躍できるキャリア形成を伴走支援している。

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