SES業界知識
SESは本当に「使い捨て」なのか?エンジニアが直面する現実と回避する方法
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最終更新:2025.09.24
公開:2025.09.24
「SESは使い捨て」という言葉を耳にして、自分のキャリアに漠然とした不安を感じていませんか?
多くのエンジニアがSESに対して抱く「使い捨て」というイメージには、いくつかの理由があります。プロジェクトごとに現場が変わり、人間関係がリセットされることや、単純な作業を繰り返すうちにスキルアップが止まってしまうといった経験が、こうした不安を生む背景にあるかもしれません。
しかし、本当にSESは使い捨ての働き方なのでしょうか?
近年、IT業界全体でエンジニアの需要が高まり、SESの役割も変化しています。
特定のスキルを持つ専門家として、複数のプロジェクトを渡り歩く働き方は、もはや珍しいことではありません。
また、働き方が多様化する現代において、SESは特定の企業に縛られず、様々な経験を積む有効な選択肢となり得ます。
この記事では、SESのリアルな姿を多角的に解説し、あなたがこの働き方をキャリアの踏み台として活用するためのヒントを提供します。
この記事でわかること
- SESが「使い捨て」と言われる背景と現実を理解する
- SESのメリット・デメリットを把握する
- 「使い捨て」に終わらないための行動指針を得る
Necmos編集部
Necmos編集部は、現場で活躍するエンジニアの声やリアルな経験に基づいた信頼性の高い情報を発信し、読者が自身のキャリア形成に役立てられるようサポートしています。 また、エンジニア一人ひとりの価値観や想いを大切にしながら、業界最高水準の給与還元を透明性の高いマージン設計で実現することで、エンジニアが安心してキャリアに集中できる環境を整えています。
なぜSESは「使い捨て」と言われるのか?その理由と背景
「SESは使い捨て」という言葉が生まれる背景には、いくつかの構造的な課題が存在します。
エンジニアが客先常駐という形で働くため、自社やクライアントとの関係性が希薄になりがちなことが、その最たる理由と言えるでしょう。
「業務委託」と「派遣」の混同:準委任契約の特性と労働者派遣の違い
SESの多くは準委任契約という形でクライアントと契約を結びます。
これは「特定の業務を遂行すること」に対して報酬が支払われるもので、プロジェクトの成果物ではなく、エンジニアの労働力やスキルを提供することに重点が置かれます。
これに対して、労働者派遣では指揮命令権が派遣先にあり、業務内容や勤務時間を細かく指示されるのが一般的です。
SESエンジニアの場合、準委任契約であるにもかかわらず、派遣とほぼ同じように扱われるケースも少なくありません。
その結果、本来持つべき裁量権がなく、単純作業に終始してしまい「使い捨て」と感じてしまうことがあります。
キャリアの不透明性: 案件ごとの職務範囲の限定とスキルアップの機会の少なさ
SESは、プロジェクト単位で契約するため、エンジニアの役割が限定的になりがちです。
たとえば、特定の機能の実装だけを任され、プロジェクト全体の設計やマネジメントに関わる機会が少ないといったケースです。
これにより、幅広いスキルを身につけることが難しく、特定の技術に特化しすぎてしまうリスクがあります。
また、案件が終了すると次の案件にすぐ移動するため、一つの現場で腰を据えてスキルを深める機会も少ないのが現状です。
自身のキャリアプランと無関係な案件ばかりをアサインされると、スキルアップの方向性が見えなくなり、「使い捨てにされているのでは?」という不安につながります。
帰属意識の希薄化: 客先常駐による人間関係の構築の難しさ
SESエンジニアは、基本的にクライアントのオフィスで働きます。
この客先常駐という働き方は、自社の同僚や上司と顔を合わせる機会が少なく、会社の文化や方針から離れてしまいがちです。
また、プロジェクトごとにチームメンバーが変わるため、長期的な人間関係を築くのが難しく、孤立感を感じることもあります。
このような環境では、自身の評価や将来について相談する相手を見つけにくく、自社への帰属意識も希薄になりやすいでしょう。
これが「自分は会社にとってのただのコマでしかない」という感覚を生み出し、「使い捨て」というイメージを助長する要因となります。
SESでこそ得られる「多角的な経験」と成長の機会
SESは「使い捨て」というレッテルを貼られる一方で、この働き方だからこそ得られる、成長につながるメリットが多数存在します。
それは、一つの会社に縛られず、多様な環境に身を置くことで得られる「多角的な経験」です。
多様な開発現場の経験:複数のプロジェクトや業界を短期間で経験できる
SESの最大の利点は、様々な開発現場を短期間で経験できる点です。
自社開発のエンジニアが特定の業界や技術に特化しがちなのに対し、SESエンジニアは、金融、流通、Webサービスなど、様々な業界のプロジェクトに携わる機会があります。
これにより、それぞれの業界特有のビジネスロジックや開発文化を肌で感じることができ、将来的に自分が本当に何をしたいのかを見極めるための貴重な経験を得られます。
幅広い技術スタックへの接触:最新技術からレガシーシステムまで、幅広い技術に触れる機会
案件ごとに求められる技術は異なります。
ある現場では最新のクラウド技術を使い、別の現場では長年使われているレガシーシステムを扱うこともあるでしょう。
これにより、特定の技術に偏ることなく、幅広い技術スタックに触れる機会が生まれます。
また、現場ごとに異なる開発手法(アジャイル、ウォーターフォールなど)やツール(GitHub、Jiraなど)を経験することで、技術的な引き出しを増やすことができます。
コミュニケーション能力の向上:案件ごとに異なるチームや顧客との折衝能力が磨かれる
プロジェクトが変わるたびに、新しいチームメンバーやクライアントと関係を構築する必要があります。
これは一見、負担に感じるかもしれませんが、異なるバックグラウンドを持つ人々と円滑にコミュニケーションを取る能力を磨く絶好の機会です。
技術的な課題を非エンジニアに分かりやすく説明したり、クライアントの要望を正確にヒアリングしたりといった、高度なコミュニケーションスキルが自然と身につきます。
これは、将来的にチームリーダーやマネージャーを目指す上で不可欠な能力です。
「使い捨て」にしないための3つの行動指針
SESを単なる「仕事」で終わらせず、主体的なキャリア形成の「手段」にするためには、受け身ではなく能動的な行動が不可欠です。
ここでは、SESを「使い捨て」にしないための3つの具体的な行動指針を提示します。
1. 市場価値を意識したスキル習得:ポートフォリオ作成や資格取得によるスキルの可視化
SESでキャリアを積む上で最も重要なのは、自身の市場価値を常に意識することです。
案件が変わるたびに新しい技術や開発手法に触れる機会を、単なる業務経験で終わらせてはいけません。
そこで得たスキルを、ポートフォリオとして形に残したり、関連する資格を取得することで、客観的に自身の能力を証明できるようにしましょう。
例えば、クラウド関連の資格(AWS、Azureなど)や、特定のプログラミング言語の認定資格は、あなたの専門性を明確にし、次の案件やキャリアチェンジの際に強力な武器となります。
2. 社内外での能動的な人脈形成:勉強会やコミュニティへの参加による情報収集
客先常駐という働き方では、自社の同僚や上司との接点が少なくなりがちです。
しかし、だからこそ自社内外で能動的に人脈を形成することが重要になります。社内の技術交流会や、外部のIT勉強会、技術コミュニティに積極的に参加することで、最新の技術トレンドや他社の働き方に関する情報を得ることができます。
また、そこで出会ったエンジニアとの繋がりは、将来的な転職やフリーランスとして独立した際の案件獲得に繋がる可能性もあります。
3. 明確なキャリアゴールの設定:どのようなエンジニアになりたいかを言語化し、逆算して案件を選ぶ
「なんとなくスキルアップしたい」という漠然とした目標ではなく、「5年後にどのようなエンジニアになりたいか」を具体的に言語化することから始めましょう。
例えば「Webサービスのフルスタックエンジニアになりたい」「AI関連の専門家になりたい」といった明確なゴールを設定します。
そのゴールから逆算して、今の自分がどのようなスキルや経験を積むべきかを考え、案件選びの基準にしましょう。
これにより、目先の仕事に流されることなく、自分のキャリアを自分でコントロールできるようになります。
まとめ
SESは「使い捨て」ではなく、「使いこなし方」次第でキャリアを加速させる有効な手段になります。
この働き方を最大限に活かすためには、受け身ではなく主体的な姿勢が不可欠です。
まずは、SESが「使い捨て」と言われる背景にある構造的な課題と、多角的な経験を得られるというメリットを客観的に理解すること。
次に、市場価値を意識したスキル習得や能動的な人脈作りといった主体的な行動に移すこと。
そして、最も重要なのは、自分がどのようなエンジニアになりたいのかという明確なキャリアゴールを設定し、そこから逆算して案件を選ぶことです。
SESを単なる「仕事」として捉えるのではなく、自分のキャリアを切り開くための「手段」として活用できれば、それはあなたの成長を加速させる強力な武器となります。
まずは、現時点での自分のスキルを棚卸しし、将来のキャリアゴールを言語化してみましょう。
それが、SESでの成功と将来のキャリアパスを切り開く第一歩になるはずです。
この記事を書いた人

久保田 泰一郎
KUBOTA TAIICHIRO
株式会社Necmos 代表取締役
2019年レバレジーズ株式会社に新卒入社。新規事業立ち上げメンバーとして、M&Aアドバイザリー事業に携わった後、株式会社Necmosを創業。経営業務を行う傍ら、主にプライム企業を対象に、コンサルティング/PMO業務に従事。“自分らしさが誰かのためになる世界”の実現に向けて、日々邁進中。
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