SES業界知識
SESの闇とは?多重下請け・中抜きの実態と搾取されないために取るべき対策

最終更新:2025.11.25
公開:2025.11.07
SESには闇がある、、、そんな噂を耳にしたことはありませんか?
インターネットで検索すれば、SES業界では「給料が上がらない」「スキルが身につかない」といったネガティブな情報が目に飛び込んできます。
これらの問題は、ただの噂話ではなく、SES業界特有の複雑な構造に起因しています。
その中心にあるのが、SESの契約形態である「準委任契約」と、それに伴う多重下請けや中抜きといった商流の複雑さです。
本記事では、SESの闇の正体と根本原因を明らかにし、あなたが搾取される側にならないための具体的な対策を解説します。
記事内でご紹介する知識を参考に、ご自身のキャリアを主体的にコントロールし、より良い未来を築くためのヒントとしていただければ幸いです。
この記事でわかること
- SESの「闇」が生まれる構造と根本的な原因を理解する
- 搾取される側にならないために、自分でキャリアを守るための具体的な対策を学ぶ
- SESのデメリットだけでなく、メリットも理解した上でキャリアの選択肢を広げる
Necmos編集部
Necmos編集部は、現場で活躍するエンジニアの声やリアルな経験に基づいた信頼性の高い情報を発信し、読者が自身のキャリア形成に役立てられるようサポートしています。 また、エンジニア一人ひとりの価値観や想いを大切にしながら、業界最高水準の給与還元を透明性の高いマージン設計で実現することで、エンジニアが安心してキャリアに集中できる環境を整えています。
多重下請け・中抜きが引き起こすSESの構造的な問題
SESの闇の根源は、複雑な商流が生む多重下請け構造と中抜きにあります。
一般的に、大規模なシステム開発案件では、大元のエンドクライアントから元請けとなる大手SIer(システムインテグレーター)やコンサル会社に対しまず案件が発注されます。
この元請け企業が、案件の一部や専門的な作業を中小SIerやSES企業に再委託する形で、仕事が流れていきます。
更にその下の企業へ連鎖し、2次請け、3次請けへと深い階層構造になることを「多重下請け」と呼びます。
商流が深くなるごとに、関わる各企業がマージン(手数料)を「中抜き」していく構造のため、最終請けで実際にエンジニアを人出ししているSES企業は大元のエンドクライアントが発注している額より大幅に低い単価で受注をしているのが実態です。
例えば、エンドクライアントが月100万円の単価で発注したとしても、元請けが20万円、その次の会社が10万円とマージンを抜いていくと、最終的にあなたの所属するSES企業に届く単価は70万円、あるいはそれ以下になることも珍しくありません。
このようなSES特有の業界構造が、どれだけ高いスキルを持っていても案件商流が原因でエンジニアの給料が上がりにくい根本原因であることがほとんどです。
見過ごされがちな「更なる闇」—多重下請けだけではない問題点
SESの闇は、多重下請けによる「中抜き」だけではありません。
SESで働くエンジニアが直面する、より見過ごされがちな問題点がいくつか存在します。
経歴詐称
一つ目は経歴詐称です。
これは、受注単価を上げるために、実務経験がない技術やプロジェクトを「できる」と偽って案件に参画させる問題です。
SES企業の営業戦略によっては、経歴書をよく見せるために文章を改善したりすることもありますが、それが偽りの場合、現場で求められるパフォーマンスを発揮できず、周囲に迷惑をかけるだけでなく、自身の信頼を失い、キャリアに大きな傷を残すリスクがあります。
偽装請負
二つ目は偽装請負です。
SES契約は「準委任契約」であり、業務の遂行に対して責任を負うものの、具体的な作業内容や進捗について発注元から直接的な指揮命令を受けることはありません。 しかし実態としては、多くの現場で発注元(クライアント)がSESエンジニアに対し、日常的に直接指示を出したり、進捗管理を行ったりしています。 これは、自社の正社員や派遣社員と何ら変わらない扱いであり、法的に「偽装請負」とみなされる違法行為です。実際に偽装請負による判例も多く存在します。
SESの闇を回避し、主体的にキャリアを築くための対策
SESの闇を回避し、主体的にキャリアを築くためには、まずSESのメリット・デメリットを正しく理解した上で行動することが不可欠です。
まず取り組むべきは「案件選び」
具体的な対策として、まず取り組むべきは「案件選び」です。 SESエンジニアにとって、参画するプロジェクト(案件)選びはキャリアを大きく左右する最も重要な要素と言えます。
案件を選ぶ際は、次のポイントを意識しましょう。
商流の深さを確認する
自分の所属する会社が、案件の商流で何番目の位置にいるのかを営業担当者に確認しましょう。商流が浅い(元請けや二次請け)ほど、単価が適切に確保されやすく、給与に反映されやすい傾向にあります。
スキルアップできる環境か見極める
自分が挑戦したい技術や、将来的に必要となるスキルを身につけられるプロジェクトかを確認しましょう。単調な作業ばかりではなく、技術選定に関わる機会があるか、新しい技術に触れられるかなどが重要なポイントです。
コミュニケーションを重視する
営業担当者との密なコミュニケーションは非常に重要です。あなたのキャリアプランや希望を具体的に伝え、それに合った案件を提案してもらう関係を築きましょう。
案件参画中もスキルアップを図る
案件に参画した後は、日々の業務に追われがちですが、そこでも受け身になるのではなく、積極的にスキルアップを図ることが大切です。
重要なのは、業務時間外の自己学習だけでなく、業務時間内(現場)にも成長のヒントを見つける「視点」を持つことです。
現場の「仕事の進め方」を盗む
技術力だけでなく、クライアント(発注元)の社員や上位会社の優秀なエンジニアが「どのように会議を進行しているか」「どういったドキュメントを作成しているか」「どのようなコミュニケーションで問題を解決しているか」など、仕事の進め方や立ち回りに目を凝らしましょう。こうしたソフトスキルは、様々な現場を経験できるSESだからこそ磨ける強みです。
業務時間外の学習を習慣化する
忙しい中でも時間は有限です。業務で関わる技術の知識を深めたり、将来目指すキャリアに必要な技術を学習したりする時間を意識的に確保しましょう。資格取得や個人開発も、客観的なスキルの証明として有効な手段です。
社内・社外のコミュニティを活用する
勉強会に参加したり、自社の同僚や他社のエンジニアと情報交換を行ったりすることも重要です。自身のスキルを客観的に評価し、新たな知識を吸収する機会を得られます。
将来を見据えたキャリアプランを持つ
SESは、特定の技術領域や業界の経験を積むためのステップと捉えることができます。
- ポートフォリオを作成する: 業務で得た経験を活かした個人開発や、学習した内容をアウトプットしたものをポートフォリオとしてまとめましょう。これは、次のキャリア(自社開発企業やフリーランス)への転職活動で強力な武器となります。
- キャリアの出口戦略を考える: SESで何を経験し、いつまでに次のステージへ進むかといった具体的なプランを立てましょう。この明確な目標が、日々の行動を後押しし、搾取される側から抜け出す原動力になります。
まとめ:SESの構造を理解し、主体的なキャリアを築こう
SESには、多重下請け構造や働き方の問題(偽装請負など)といった、知っておくべき構造的な課題が存在します。
しかし、これらの仕組みや注意点をあらかじめ理解しておくことは、環境に流されず、自身のキャリアを守るための第一歩となります。
大切なのは、SESのメリット・デメリットを把握した上で、自らキャリアをデザインする姿勢です。 参画する案件選びのポイントを押さえ、現場の業務や自己学習を通じてスキルアップを続けることで、SESのメリットを最大限に活用できます。
SESでの多様な現場経験は、あなたの市場価値を高める貴重な「足がかり」となります。本記事で紹介した対策を実践し、理想のキャリアを切り拓くための一歩を踏み出しましょう。
この記事を書いた人

能宗 新
NOUSOU ARATA
株式会社Necmos フロントエンドエンジニア
大学卒業後、新卒でSES企業に入社するも、自身の将来性に危機感を抱いたことをきっかけに、株式会社Necmosに入社。デジタルクリエイティブ事業部の初期メンバーとして、開発未経験の状態から様々な受託案件に携わった後、再びSESとして金融系や官公庁系などの現場業務に従事。SESと受託開発の両方を経験することで"視野の広がり"を感じ、今後さらに対応領域を広げるべく、デジタルクリエイティブ事業に再復帰し、Necmos社内のDX化やコンテンツマーケティングなどを推進している。
この著者の記事一覧を見る.jpg&w=1920&q=75)


.jpg&w=1920&q=75)
